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フランス文学(16)
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古井由吉は私にとってはじめての作家ではない。「杳子」をかえるさんに薦められて読んだことがあるのでそれ以来のことである。それ以来さらに識字率が落ちたのかなんだか分からないけれど、昨今の出版物の傾向とは裏腹に、なんとルビをふって欲しい単語の多かったことか。
これは病院小説である。マルテの手記も魔の山も風立ちぬもそうとも言えるけれど、現在の病院の立場がそうなのに比例して、大変現代的な病院小説である。40代の私は「選ばれてあることの恍惚と不安」だけが文学ではないことにようやく気がつきつつあるが、もう少し先にある老境の文学がここに存在することにようやく気がつきつつあるのであった。 (それにしても、読めない漢字が多いことに恥じ入るのであった。) 聖耳・・研ぎ澄まされた聴覚が音を拾う。それは、眠れない患者たちの退屈を空気に充満させた明け方前の病院の廊下の静謐だったり、自分の葬式の日、棺おけの中から耳を澄まして聞いているかもしれない親戚縁者の会話だったり、または夜の路地をひたひたと走る野犬の足音だったり。 ひとつ挙げるとすれば、それはやはり「犬の道」。10階より高いところに居る患者が、そこから犬を放つ。関東平野のまっ平らなところを生きてきたはずの記憶のトポロジーを、その微妙な坂道の角度まで犬は辿っていく。 夜道をひたひたと小走りに行く。都電もとうに絶えた通りをあちらへこちらへ戻り・・犬には全体が見えない。ただ夜がある。ただせわしない歩みがある・・。三叉路、水溜り、電気屋、時計屋、床屋、瀬戸物屋・・ひたすら暗い夜道である。見たことすらない道筋を自分も知っていると直感するのはなぜだろう。 Jan_2005 想定されるキーワード> 病院文学、老人文学、廃墟、記憶
by perdida
| 2005-01-31 23:59
| 夜の読書
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