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フランス文学(16)
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by perdida
| 2010-11-30 23:59
| 犬は友達!
なんてったって楳図かずおである。わたしは子どもの頃「へびおんな」その他の作品でさんざん恐ろしい思いをし(「なんで読んでしまったんだろう!」と何度後悔したことか)、トラウマになっていたので、まことちゃんがブームになった時もスルーだったし(だって、ギャグ漫画とは言えやっぱりブキミだったし)、この「真悟」にしても、そういえば友人が騒いでいたのを覚えているけど、当時は興味を持たなかった。
でも、大人になってから徐々に(おそるおそる)楳図作品に触れるにつけ、なんとすごい作家なのであろう、と感嘆し、これだけ他の追随を許さない表現者であれば、どんなに本人が奇妙であろうが、赤白縦じまのおうちを建てて景観を害しようが、しかたないんじゃないのかな、と納得するまでに至っていた。 今回のこちらはビッグコミックスペシャルから新たに発刊された楳図選集とのこと。表紙の絵を見たら買わずに通り過ぎることが出来なかった(外苑前Ciboneにて)。イントロダクションはまことちゃん風ギャグタッチで始まるのだが、だんだんすごいことになって行き、3巻まで読んだらもう怖くてダメ。悪い夢を見そうなので、これ以上読み進めるのはやめときます。 2巻を占める東京タワーのストーリーも圧巻。手に汗握ります。 怖い話が人一倍ニガテな反面、怖いという感情にはとても興味を持っており、人が怖いと感じる感覚には何かとてもプリミティブな秘密が隠されているようにも思います。昔書いた「怖い本」談義はこちら。 http://homepage3.nifty.com/callate/horror.htm #
by perdida
| 2010-02-28 23:59
| 夜の読書
すでに「木曜日の男」という邦題で何度も邦訳が出ている探偵小説の古典。このたび原題The Man Who was Thursday に忠実なタイトルで新訳が出たとのことだ。「木曜日の男」ではスルーし続けたに違いなかった私も「木曜日だった男」では、ふと興味を持たずにはいられない。だって、不思議なタイトルですもの。
19世紀末と思われるロンドン、芝居の書割のような舞台(ちょっと映画「カリガリ博士」のよう。でも、思い切り毒々しいテクニカラーで。)を背景に物語は始まる。舞台の中央には無政府主義者のグレゴリーと、法と秩序を愛する主人公サイムのふたり。このふたりの論争からしてかなり可笑しいのだけれど、最初は笑っていいのかどうか分からず遠慮しながら読み進める。おおまじめなつもりの古典が、現代の読者から見るとおかしいことってよくあるので。 その後のストーリーは古典に似合わずかなりのアップテンポで急展開。実は警察のスパイだったサイムが無政府主義者たちの秘密基地にもぐりこみ、アナーキスト達をまんまと騙してその中枢にもぐりこむや楽しい冒険活劇は早くもトップギアに。サフランパークから居酒屋へ、そして居酒屋の地下に築かれたアジトを出てからは、あちこちの市街をめぐったあげく、ロンドンを離れてカレー(フランス)まで繰り出し、ロンドンに戻ってきたと思ったら動物園に迷い込み・・・。 副題に「一つの悪夢」とあるので、そのような心構えで読み始めた私の予測は見事に裏切られ、年末年始就寝前の私の読書はくすくす笑いの連続で、となりで寝ているかえるさんが「どうしたの?」といぶかることもしばしばでした。 細かいことを言うとネタバレになってしまうので控えますが、この物語にはユーモアとサプライズとそれ以外の仕掛が満載。ばつぐんのセンスを持ったビジュアル作家の手で、いつか映画にしてほしい。不条理やナンセンスギャグにも満ちているのでアニメーションがいいのでは、とも思いつつ(トムとジェリーみたいな追っかけっこシーンもたくさんあるし)、VFXを駆使した実写でもいいかも知れません。 南條竹則さんの訳からは、原作の文体のエッセンス(特にそのユーモア!)もほの見えてとても良い。これこそ私の考える由緒正しい(?)ブリティッシュなユーモアである。南條さんという人は「ドリトル先生の英国」という新書の著者で、この本は以前買った記憶があるので、今度本棚を探してみよう。ブリティッシュといえば、この物語には月曜日から日曜日まで、総勢7名の紳士ばかりが登場する。その7人の追いつ追われつがストーリーの骨格となっており、全編ボーイズクラブなところも大変英国風だ。 チェスタトンはブラウン神父の探偵小説シリーズの作家として著名。こちらもさっそく読んでみます。 #
by perdida
| 2010-01-04 17:28
| 時々ミステリー
中野ブロードウェイの古本屋で100円で売られていた。タイトルも装丁も良かったし、第一松本清張って翻訳もしてたんだ!というのが新鮮で即買いしたもの。記憶の端に、そういえば北京原人の頭蓋骨だかなんだかが行方不明になったという昔聞いた話を思い出しながら。
ニューヨークのジャマイカ鳥獣保護区湿地帯で、中年婦人の死体がバードウォッチャーにより発見された、という新聞記事から始まるこのミステリーは、第2次大戦を挟んだ時代の、中国と米国を主な舞台としたもので、作者の想像の産物ながら限りなくノンフィクション風。アメリカ人、ドイツ人、中国人に日本人、と戦争をきっかけにさまざまな国籍の小悪人な小市民(または軍人)達がニアミスや小競り合いを繰り返しながら、それぞれの皮算用が絡み合って、誰も意図しなかった北京原人の頭骨の紛失を招いた、という皮肉な筋立てだ。 1941年12月、日米戦が必至の情勢となっていた頃、北京原人の米国への発送が秘密裏に行われた、ことは事実なのだそうだが、その後この荷物は蒸発してしまい、さまざまな憶測や小説の題材にもなっているというもの。 作者のクレア・タシジアンは若いころ北京協和医科大学の解剖学教室で働いており、北京原人の化石骨の積み出しの際荷造りを担当した一人だとのこと。登場人物の設定も、当時北京原人の積み出しに関わった周囲の人々をモデルにしており、そのため一層この作品をリアルなものにしているらしい。 実際の化石骨は本書の結末で語られるような、そんなことになってしまったのか、または・・・?今や歴史上のミステリーですね! #
by perdida
| 2009-08-15 23:59
| 時々ミステリー
去年ヒースロー空港で「BUY 1 GET 1」(2冊で1冊)キャンペーンに乗せられて買ったペーパーバック。いかにも東欧チックな表紙のイラストがとてもかわいらしくて、思わず手にしたものだ。
本書はイギリスの地方都市(ピーターボロー)を舞台に、ウクライナ系移民家族に起こったある事件を描いたユーモラスな物語。主人公はNadia。40代後半の仕事を持つ女性で、夫(Mike)、娘(Anna)の3人暮らし。Nadiaには年の離れたVeraという姉がいる。Veraには娘がふたり。離婚をしていて夫はいない。この姉妹はしばらく前に母親を病気で亡くしており、実家には84歳の父ニコライがひとりで暮らしていた。ついでに言うとNadiaとVeraの間にはいろいろあって、姉妹仲はうまく行っていなかった。 物語は父から娘Nadiaへの電話で幕を上げる。父は娘に宣言する。「結婚しようと思っているんだ」と。84歳の結婚はイギリスでも物議をかもすようだが、詳細を追求してブツギはさらに大きくなる。なぜなら、その結婚相手は36歳のウクライナ女性で、ウクライナに住んでいてビザはないとのこと。しかも息子がひとりいるという。 当然周囲はこの結婚に反対するが(金銭目当て、ビザ目当てに違いない!)、外野の反対意見もむなしく話はとんとんと進んでしまい、あっという間に花嫁がその息子とともに迎え入れられることになる。 ここまでのあらすじは背表紙に掲載されていたので読む前から了解していたが、この後はウクライナとイギリスの心温まる交流が展開されるのかと思っていたら、そこはイギリス発の辛口ユーモアでちょっと違っていた。 罪の意識があるせいか、父はなかなか花嫁を娘達に紹介してくれなかったが、やっと会ってみると大変なグラマラス美人。しかも、わざわざ自分をいつわる性格ではないので、大変な強欲であることもほどなく露呈。そして、色ボケで結婚してしまった84歳の父が大変な目に遭う、というお話である。このお父さんがまた、カクシャクとした元気で変わり者のおじいさんで、さんざんな目に遭いながらも負けてはいない食わせものです。 一家を上げての大騒ぎに巻き込まれていくうちに、母の思い出があったり、姉妹の間にあったわだかまりがほぐれていったり、一家が戦争を生き延びて祖国を捨て、イギリスに移り住むまでの歴史が明かされたりする。 そして日頃リベラル思想を標榜し、移民の味方という立場をとっていたNadiaの心の葛藤があったりもする。(自身移民2世という立場だし。)そんなNadiaを見守るMikeは、主要登場人物の中で唯一ウクライナの血を受けていない存在。このMikeは父ニコライのとても良い話し相手でもあり、良きダンナさんだ。イギリス版マスオさんだな。 一方、作品のブラックな魅力になっているのはウクライナからやって来た悪妻Valentinaの悪女ぶりである。彼女の強欲ぶりは、浅ましくストレートで、それが片言の不自由な英語によってさらに凄み(とおかしさ)を帯びる。84歳の夫を死に損ないと呼ばわり、ほとんど暴力をふるい、しかも夫以外の男と見れば色仕掛けにも余念がない。おっとりマスオさんのMikeすら、最初の対面では魅了されかかったくらいの威力である。そのわりに息子のスタニスラフは結構素直でいい子なんだけど。 Valentinaは84歳の夫の生き血を吸ってさらに太っていくのだが、太れば太るほど女っぷりを上げて男を魅了するという法則がそこには存在している。(世の女性の皆さん、ダイエットばかりしている場合ではありません。) タイトルの「トラクター」は、父ニコライが元エンジニアで、余生の仕事として東欧のトラクターの歴史を執筆しているところから来るのだが(なので、作品中時々この原稿が挟まれる・・が正直この部分はちょっと退屈で、そのために何日も読書が中座してしまうこともあった。)、そして、彼はどんなに虐待されても情熱を込めて本を書き続け、終盤この原稿は完成を見ることになるのだが、「トラクター」って実はValentinaの比喩なのかもしれません。 ウクライナ人同士の会話では、Mikeの名前までウクライナ語的に語尾が変換されているシーンがあって、これってヨーロッパでよく体験する楽しいことのひとつです。そういえば、知り合いのスペイン人は、フランス人ギョームのことを、「ギジェルモ!」とスペイン語変換してはばからず(わたし達日本人からしたら全く別の名前ですよね)、ギョームは呼ばれるたびにちょっとだけむっとしていたような気もします。 作品を通して、こんなにさんざんウクライナに触れていながら、最後まで地図でウクライナの場所を確認しておらず、作者やウクライナの人々に対して心苦しく思っています。あとでネットで確認します! ※後日ロシアとその周辺諸国に詳しい友人と会いました。彼女によるとウクライナは豊かな穀倉地帯だそうです。(あと、キエフ・バレエ団で有名だったんですね!)それを聞いて、作中描かれている、国を捨てた人々の祖国への思いが一層しのばれるように思いました。 #
by perdida
| 2009-03-20 17:20
| 辺境文学びいき
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