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「自閉症を持つ動物学者が動物の行動と感覚を徹底解説」と帯にある通り、動物学者であると同時に自閉症を抱える著者が、自らの体験と照らし合わせながら動物の“気持ち”に迫る稀有な本。
著者の仕事のひとつは精肉処理工場のコンサルタントであり、マクドナルドやケンタッキーフライドチキンなどがクライアントであるらしい。牛、豚、ニワトリなどの家畜が快適に生をまっとうし、恐怖や痛みを意識せずに死を迎えることが出来るように、一連のプロセスの管理システムをコンサルタントの立場で作っている。“家畜の幸福”を目指すのはもちろん人道的な理由もあるけれど、屠殺時の恐怖や苦痛は肉の質を損なう、と言えば、“動物愛護”がイマイチしっくり来ない人々にも理解してもらえるかと思う。 わたしはと言えば、子どもの頃から動物の気持ちを思い心を痛める方だったので、このような取り組みには大賛成である。一方でおいしいお肉も(残念ながら)大好きである。 そういうわけで、本書には牛、豚、にわとりは多く登場するが、サルやリス、ゾウ、クジラ、カラスなどの野生動物、猫、オウムなどの他に、著者が子どものころから親しんでいる馬と犬にはだんぜん多くのページが割かれている。 「動物はこんな風に世界を知覚する」「動物の気持ち」「動物の攻撃性」「痛みと苦しみ」「動物はこんな風に考える」とひとつひとつ大変興味深い問題設定で話は展開し、終盤には動物の言語についての考察が加えられる。 プレーリードッグの言語(方言があり、集団によって伝えられているものであることが分かる)の存在は、言語が知能の発達した種(せいぜい霊長類)に特有のものである、という前提をくつがえす。むしろ、言語は被食動物が集団で身を守る必要性から発達したものかもしれないのだ。 また、音楽と言語の関係について(モーツアルトとムクドリの共同作品について)の一節も大変スリリングである。 それから、聴覚障害者で識字の訓練を受けなかった(つまり言葉を持たない)イルデフォンソというメキシコ人の話も非常に面白い。彼の研究は、言葉を持たずに思考している(に違いない!)動物の頭の中を知る大きな手がかりになるのだ。 そして、締めくくりはヒトと犬の関係についてである。 最初に埋葬された犬は1万4千年前にさかのぼるので、これまではオオカミが犬化したのはこの頃だと思われていた。けれども最近の研究では、ヒトとオオカミがいっしょに暮らすようになったのはそれよりずっと前、おそらく10万年ほど前のことで、ホモサピエンスが直立猿人から進化したばかりの頃、と推定されるらしい。 この違いは大きい。 これまではヒトが犬を作った、と考えられていたが、ヒトとオオカミはもっと対等で、お互いに進化の手助けをしたことになるからだ。 原始人がオオカミと仲間になった時代・・・ 「オオカミは集団で狩りをし、人間はしていなかった。オオカミには複雑な社会構造があり、人間にはなかった。オオカミには同性の非血縁者のあいだで誠実な友情があり、人間にはなかった。これは今日のほかのどの霊長類の種にも同性の非血縁者のあいだで友情が見られないことから判断できる(チンパンジーは親子関係が中心だ)。オオカミはなわばり意識がきわめて強く、人間は-これまた、今日のほかのどの霊長類にもないことから判断すると-おそらくなわばり意識は弱かった。」 わたしはこの部分にいたく感動してしまったのだが(なんといってもオオカミ好きなので)、他にもわくわくするような素晴らしい新説がいっぱい。 さらにテンプル先生は言う。犬には仕事を与えよう。犬は作業をするように生まれついている。現代社会では、羊の番をして生計を立てている人はほとんどいなくなってしまったが、これは不幸なことで、おかげで多くの犬が仕事にあぶれてしまった。
by perdida
| 2008-04-13 21:25
| 犬は友達!
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